28:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 23:31:59.89 ID:S8sM1lda0
ちひろさんは一人腑に落ちた様子だった。
「どうかしたんですか」
「いえ……」口を開きかけたけど、なにかを思いとどまったように小さく首を振った。
「うんうん、なんでもないです。二人ともレッスン、頑張ってくださいね」
ちひろさんが去った後、私たちはレッスン用のダンスの動きを始めた。
と、言っても私は動きを知らなかったから、裕美ちゃんに教わりながら。
裕美ちゃんの動きはぎこちなくて、自信もなさそうだけど、それでも一生懸命練習に打ち込む姿は、見惚れるほどだった。動くたびに揺れる長い髪は風に鳴く草原のススキのように静かで力強く、優しかった。
裕美ちゃんの後に、私もダンスを行った。初めてだし、うまくできたとはいえない。
それでも終わると、裕美ちゃんは拍手をしてくれた。
「すごいね、ほたるちゃん。とっても上手だよ」
感心した裕美ちゃんに、私は照れくさくて頬が熱くなった。
「前も別の事務所にいたから……レッスンとかなら」
「だから上手なんだね」
すると、裕美ちゃんはジーッと私を見つめてきた。なんだか落ち着かなくなった
「あの……どうかした?」
「え、ああ違う。私も頑張らなきゃって思って」
自分の顔を包む様に両手で覆うと、目頭の部分を揉むように指を動かした。
「睨んでるみたいに見えたよね?」
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