22:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 23:24:03.33 ID:S8sM1lda0
挨拶をしながら見回してみたけど、やはりプロデューサーさんの姿はなかった。
今日の予定はこれで終わりと聞いていたけど、帰る前にプロデューサーさんにも声を掛けたほうがいいだろう。
そういえば、連絡先も知らなかった。
(探さなきゃ、駄目かな)
なんで私が探さなきゃいけないのか、そう思うと気が重かった。
どこかで別の仕事でもこなしているのか。その相手には、もっと笑ったりしてるのかな。
そんなことを考えて、ますます気分が重くなる。でも、たとえ素気なくても、彼は私のプロデューサーだ。勝手に帰るのは気が引けた。私はモニターで写真をチェックしているスタッフさんの一人に近づいていった。
「お疲れ様です。あの、プロデューサーさんがどこにいるか知ってますか?」
スタッフさんは不思議そうな顔をした。
「彼? 彼ならずっと外で待ってたよ」
「えっ?」
信じられなかった。そんな私の感情を読み取ってか、彼は笑いながら続けた。
「ホントだって、途中で出入りしたけど、ずっとスタジオ前の椅子に座ってたよ」
私はスタッフさんたちに挨拶をしてから、スタジオを出る。
嘘ではなかった。扉のすぐ前で、プロデューサーさんはパイプ椅子に座って待っていた。スマホを見るでもなく、本や企画書を読むわけでもなく。
手に缶を持ちながらジッと椅子に座っていた。視線は足元に向けられ、どこか虚ろで。
(まさか)
お酒でも飲んでいるのではないか。そんな不安が胸に湧いたが、手にしていた缶はコーヒーだった。
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