18:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 23:08:58.27 ID:S8sM1lda0
「今日は顔合わせだけだ。業界のことは今更どうこういうこともないんだろ。経歴をみたけど、他から引き抜かれたって」
「引き抜きと言うより……倒産してしまって」
それを口にして、私の気分は重くなった。
「ふうん、そうか」
でも、プロデューサーさんは素気なかった。そんなものになんか興味がないように。
彼の態度に、私は少しホッとした。
「じゃあまずは、事務所内の案内だけど……生憎俺もよく知らないんだ。新入社員でね」
新入社員、というのは不思議だった。もしかしたら、私と同じで、他の事務所から移ってきたのかもしれない。
「私が案内しますから。プロデューサーさんは休んでいてください」
「……ありがとう、ちひろちゃん」
ちひろさんは微笑んだ。どこか寂しさを感じさせる笑みだった。
「それから、換気もしっかりお願いしますね」
「ああ」と、プロデューサーさんは静かに答えた。彼を残して、私はちひろさんについて事務所の中を案内された。
その案内は、私の頭には入ってこなかった。どうしてプロデューサーさんはお酒なんか飲んでいたのだろうか。
単なる酔っ払いなのだろうか。
それとも、お酒を飲まないといけないようなことがあったのか。
(例えば、担当したくもないアイドルを、担当することになったから)
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