17:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 23:07:51.57 ID:S8sM1lda0
「待たせて悪かった」
彼はおもむろに立ち上がってから、自己紹介をした。表情は虚ろなままで、ニコリともしなかった。
「よろしく……お願いします……」
私の戸惑いが彼にも分かったのだろう。彼は言い訳をするように口を開いた。
「昨日飲み過ぎたんだよ。二日酔いだったんだ」
私には信じられなかった。
この状態はむしろ、酔いを覚まそうとしているみたいだ。
以前、現場でそういう人に出くわしたことがあった。思えば、朝まで飲んでいたというあの俳優さんの目にそっくりだ。
それに近づいて分かったが、微かにお酒の匂いがした。さっきまで飲んでいたかのように。
(そんなわけ……ないよね……)
そんなとき、机の下から私の方へ何かがゆっくりと転がり出てきた。ギョッとなる。
お酒の空き缶だった。
余りのことにジッと見つめてしまったが、黒いヒールが横から缶を蹴飛ばすと、コロコロと机の下に戻っていった。
「あははは」
足の主であるちひろさんも、引きつった笑いを浮かべていた。
笑ったままプロデューサーさんを睨みつけたが、プロデューサーさんは視線を合わるのを拒む様に私をじっと見ていた。
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