白菊ほたる「恨みます、プロデューサーさん」
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15:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 23:05:00.57 ID:S8sM1lda0


 約束してた時間よりちょっと過ぎてから、プロデューサーさんが戻ってきた。なんだかとても疲れているようだった。

 うんざりしてるようにも見えた。なにか気になるのか、しきりに片手を振っていた。見ると手のひらが少し赤くなっていた。


「ちひろさん、後はお願いね。アタシ、外で空気吸ってくる」


 頷いたちひろさんから、プロデューサーさんは私に視線を送る。


「じゃあね、ほたるちゃん。また今度」

「えっと……ありがとうございました」

「はは、ありがとうか」


 疲れたように笑ってから、ぽつりとつぶやいた。




「どうだろうな」


 そのまま、プロデューサーさんは歩き去っていった。去っていくときも、やはり手を気にしていた。すれ違う時、微かに煙草の匂いが香った。建物内は禁煙と聞いていたけど。

 ちひろさんに促されて、私は反対の道に進んでいった。

 案内されたのは、扉に『第三応接室』と銀のプレートにそっけなく刻まれていた部屋だった。


「失礼します」


 ちひろさんが扉を開けた瞬間、鼻についた匂いに、私は思わず顔をしかめてしまった。

 さっき、プロデューサーさんとすれ違ったときと同じ、煙草の匂い。でもさっきより強い匂い。
 小さな部屋の中ではまるで霧が発生したみたいに、薄い煙で覆われていた。

 匂いは、煙草だけじゃない。いろんな匂いが混ざっていた。何かが焦げたのと勘違いしてしまうような、強いコーヒーの匂い。

 そして栄養ドリンク特有の、べた付くような甘い匂い。

 机の上には、真っ黒なコーヒーの入ったコップにポット。

 その隣には、エナジードリンクと、スタミナドリンクの空の瓶と缶。

 エナジードリンクの缶の上には、まだ火のついていた煙草。女性が吸うような、細いタイプの煙草だった。




 汚れた机の向こうのソファーに、彼は座っていた。







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