27: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2018/08/10(金) 00:14:47.79 ID:OipDTOFK0
○
電車に揺られること十数分、目的の駅へと到着した。
あのハイテンションな美容師さんが待っているであろう、美容院を目指す。
そういえば、ここまでの道のりで声をかけられることはなかったな、と思う。
顔を二度見されることなどはあったが、それでも全く声をかけられなかったのは意外だった。
最近は花屋の方に私目当てで来るお客さんもめっきり減ったし、そろそろ私の世間的な認知度も落ち着いてきたのだろうか。
そんなことを考えていたところ、背後から「あの、すみません。もしかして……」と呼び止められた。
残念。
そう上手くはいかないものだな、と振り返って笑顔を作る。
大学生くらいの女の子だった。
「渋谷凛さん……ですよね?」
その問いかけに、私は何も答えず、ただ伊達眼鏡を外す。
女の子の顔が私にもわかるくらい、明るくなった。
「ずっとファンでした!! 今でもファンです!」
そう言って、彼女はほぼ直角と言っていいくらい深々と頭を下げた。
「うん。ありがとう、嬉しいです」
純粋にそう思った。
私のファンのみんなは、私が芸能人じゃなくなっても、私のファンでいてくれるのだ。
それはなんだかちょっと素敵だな、と目頭が熱くなりかけたがぐっと堪える。
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