46: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/06(月) 19:28:53.56 ID:yVF65aIb0
なんにも実感として湧き上がらなかった。
想像すら思い浮かばない。
ただ、大野なんて[ピーーー]ばいいと思った。
これを大野に振られた女の妄言だと、切り捨てることもできたはず。
いや、そうできたならそうすべきだったのだ。
そして未来永劫に聞かなかったことにして忘れてしまえばよかった。
でもそれを俺は嘘だとは思えなかった。
最後に女は俺に「ごめんね、」とひとことだけ謝った。
もうとっくに怒ってなんかなかったけど、許せるわけなんてない。
フラフラと金も置いていかずに喫茶店をでた俺は、そのままの足で大野の家に向かった。
道中、いろんなことを思い出した。
あいつが転校してきた日のこと、サッカーのレギュラーにあいつが選ばれた日のこと、夢を初めて語られた時のこと、部活をやめたこと、これまでのずっとあいつにどうしてもテストで勝てなかったこと。
大好きだったはずなのに、いつからか劣等感に押しつぶされて
大野が俺を追い越すたびに自己否定の渦に駆られて
それを思春期の些細な悩みだと、そう思うことは俺にはできなかった。
逃げることもできなかった。
いや、中途半端に逃げようとして、でも俺は大野に求められればその気持ちを無下にすることができなかった。
そして小学生の時のこと。
何も考えずに一緒いた。
いつでも対等だった。
お互いに同じくらい相手を思っていて、いつまでも一緒にいたいと願っていた。
喧嘩したり、上級生相手に共闘したり。
大野との純粋な思い出のすべてが、今の俺たちにはもうないものだと気が付いて
もう、全部辞めよう
そうぼんやり空を見上げた。
何処までも繋がっているらしい正午の空は、嫌味なくらいに快晴だった。
とあるアパートの一室の玄関でインターホンを鳴らすと、大野がすぐに出てきて。
誘いを断ったくせに突然来た俺は大野に何かしら言われると思ったが、別に何かを聞かれることもなく案外あっさり中に通された。
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