川島瑞樹「ミュージック・アワー」
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42: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:18:49.58 ID:Ai+XpKnp0
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その夜。
瑞樹は、公衆電話のボックスの中で、ボタンを押した。コインを入れずに。
もう何度目だろうか。
携帯でかけて、出てもらえないのが怖かった。自分からかけるのも億劫だ。

だけど、もうLIVEまで日がない。瑞樹は覚悟を決めて、受話器を上げた。

『もしもし』

60を過ぎた、女性の声。瑞樹は口元を手でおおった。
言葉が出ない。

「……………」

『瑞樹ちゃん、か』

どうして、と言うことすらも、できない。
瑞樹の肌全体がけばだって、緊張で喉元がしびれる。

『言いたいことは色々あるよ……でも、怒ってないよ。
 
 知っとるから。瑞樹ちゃんがいっぱい、いーっぱいがんばってること。
 だから、“がんばれ”なんて言わん』

瑞樹はボックスの中で、くずれおちるように座りこんだ。

『いろんなこと。気が済んだら、かえってきいや』

うん。
声は、届いただろうか。



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