川島瑞樹「ミュージック・アワー」
1- 20
29: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:08:31.63 ID:Ai+XpKnp0
「31」

唐突に、女が言った。ひどく不機嫌そうな声だった。

「はい?」

「私の年齢よ」

瑞樹はその言葉から、相手が何故刺々しい態度をとるのか察した。
だがそれは瑞樹の選択によるものではなく、どう責任をとり、相手を和ませればよいかは未明である。

また2人で押し黙っているうちに、料理と新たなワインがテーブルに運ばれてきた。
場所は、近年流行りの肉バルと呼ばれるレストランで、名が示す通り上等な肉料理と酒が売りである。
香ばしく匂い立つ、熟成肉のステーキ。華はないが、力強い味わいのスペイン産の赤ワイン。

瑞樹はいちはやく小皿とトングを取り、未明の女の分を取り分けた。

年長である。くわえて、少しでも印象を良くしたい。
露骨にきらいだと見せつけられるのは癪だったが、年長、相手の年齢からたしかに学び取るものがあると感じた。

「ありがとう」

女は素直に礼を言ったが、そのあとにこう付け足した。

「でも、ちょっぴり多いわ」

瑞樹は女の皿から、自分の皿に肉を移した。
その手つきは素早かった。こういったことには慣れている。

「ママー私達のぶんもー」

「かわしまママ、まがみっつ……ふふっ…」

小鳥達がぴぃぴぃと、親鳥にご飯をせがむ。
瑞樹は張っていた肩を下げて、彼女達の分もとりわけた。

「うしなのに“とり”わける……ふふふっ……くっ!」

楓は勝手に瑞樹に懐いている。
そこが楓の魅力なのかもしれない、と瑞樹は思う。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
54Res/76.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice