川島瑞樹「ミュージック・アワー」
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27: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:06:40.48 ID:Ai+XpKnp0

「楓ちゃんはさぁ、プロデューサーがモデル部門から引っぱってきたんだよね」

「で、そのP君が私が独占しているのが気に入らない……と」

「ピンポーン。グリフィンドールに50点」

「ハッフルパフのほうが好きなんだけど」

「私はスリザリン」

瑞樹はくつくつと笑った。
早苗との会話だけでなく、楓の子どもっぽさがおかしかった。
羨ましくもあった。

「みんなから25歳児って言われてんの。楓ちゃん」

早苗は屈託のない表情を浮かべた。瑞樹は、ひとまず安心した。

「あの子と仲良くなりたいわ…ちょっとむずかしいかもしれないけれど」

「かんたんかんたん!」

早苗は手首をくいっと口元でひねった。

「今時、“ノ”ミュニケーションはパワハラになるんじゃない」

瑞樹は過去の、不愉快な記憶がよぎった。
酒が全ての関係を生み出すとさえ思っている輩が上にいて、ずいぶん苦労した。

瑞樹はよく酌をさせられた。その上司だけでなく、同僚や後輩の男にも。
それと同じことをしたくなかった。

「パワハラどころか、逆にこっちがアルハラされるわよ」

早苗は少し誇らしげな顔で胸をそらした。ゆれる。

「楓ちゃんは現代のキリストね。
あの子の血って、きっと全部アルコールだと思う」

「ワインが好きなの?」

「な〜んでも。ワインでもビールでも、ポン酒でもスコッチでも……きっと、ひともおんなじ」

瑞樹は、楓との遭遇を思い返した。

25、25歳。
私とはちがう道で、20代の半分まで生きてきたんだわ。

瑞樹は差別をしたことはないが、博愛主義者ではない。
軽蔑を軽蔑だとわかっている。嫉妬を嫉妬だと知っている。そういう道を選んだ。

楓はきっと、ひとの悪意を感じ取れないのかもしれない。
自分のうちにないものに共感ができないように。

瑞樹はそのことが、楓がモデルとして成功しなかったことと関係があるような気がした。




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