81:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 15:20:12.29 ID:uC+MDGI60
ゆみの舌は回転を止めている。
答えは沈黙。というか、沈黙もある種の答えだろう。なんとなく私の目から、ゆみの態度は知らないというより知らないほうが都合がいいと言いたげに映った。
猫でも捕まえようかとも思ったけれど、ゆみが少し顔をしかめたように見え、意識を目の前に戻す。彼女を見ると、少し深く呼吸をして今まさに次の一言を準備していた。
「それを私の口から語られて、久は問題ないのか」
「問題大アリよ。でも私が言わなくても同じみたいだし、それにゆみが事情をわかってたほうが話が早いのは確かだしね」
ゆみが、ひとつ深呼吸をする。
「……ふう。そうか、なら遠慮なく。そうは言っても、知ってるというより心当たりがある程度だから。違っても笑わないでほしいが……まず一日使うほどの練習試合はない。だが、宮永照との対局があるのは間違いないだろう。白糸台ではなく宮永照と名指しにしたあたり、この対局の目的は練習などの、対局そのものが目的となるものではなく結果が影響するなにかだろう。この試合が大会ならともかく、草試合ということは」
長い。
「え、待って待ってゆみ。思考の過程全部話すつもり?」
「ん? そのほうがいいかと」
「それ、まだ長くなる?」
「どうだろう。自分でもあまり上手く述べられるかどうか」
「めんどうだから10秒でお願い」
「……。了解した。要は、これはおそらく久とチャンピオンの賭け麻雀で、その内容は私に作り話を持ってきてまで勝ちたいほど重要でかつ話せないもの。私が思い当たるのは一つ、宮永姉妹に関する何らかじゃないのかってことだ」
いつの日か温泉で咲と宮永照の話をしたとき、その場にはゆみもいたはずだ。言われてみれば察しはついてしまうのも頷けるかもしれない。
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