16: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:04:39.19 ID:ema8T1+O0
うどんが届き、互いに箸へ手を付ける。
薬味をからめた透き通るような麺が美味だ。
「アンチョビさん、これからどうするんですか」
17: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:05:58.04 ID:ema8T1+O0
「アンチョビさん。なんでしたら、うちを拠点にしてくれても構わないですよ」
「え?」
アンチョビの顔に生気が増す。
18: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:07:34.47 ID:ema8T1+O0
「――まぁ、助かるなら、決まりですね」
悩んだところできっとアンチョビの答えは変わらない。
だからさっさとそう言ってしまうと、彼女もすぐに言葉をかえした。
19: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:09:02.26 ID:ema8T1+O0
「じゃ、そうと決まれば時間もない。とりあえず日用品を揃えなきゃいけないよな。俺が買うのも何だから安斎さんの方で見繕ってきてよ」
「安斎じゃない! アンチョビだ!」
「あぁ、そこはアンチョビで通すんだ。了解です。はい。アンチョビさんで」
20: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:11:10.06 ID:ema8T1+O0
「店を出て右手へずっと歩いて行くと――ええっと、でっかいショッピングモールがあるから。アンチョビさんはそこで必要そうなものを買ってきて。俺はその間に部屋を片付けとくから」
「お、おう」
「まぁまずはお金を卸しにいきますか。あんまり手持ちもないので」
21: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:13:39.58 ID:ema8T1+O0
アンチョビが我が家へ戻ってきたのは4時間後――16時頃のことだった。
部屋の整理も初めは2時間もあれば終わるだろうとたかをくくっていたのだが、漫画を段ボール5箱ほど詰めたところで時間切れとなった。
処分する漫画の選別をしたり、懐かしくて読み返したりなどしていたせいである。
つくづく駄目人間だ。
22: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:16:38.05 ID:ema8T1+O0
さて、これで居住空間は確保できた。衣食住の、『住』だ。
寝具についてはあいにく寝袋と毛布くらいしかなかったので、注文した布団が届くまではこれで我慢してもらう。
俺のベッドは同人誌や脱ぎ散らかした衣類だらけの寝室にある。申し訳ないけれど貸すことはできなかった。
23: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:17:56.85 ID:ema8T1+O0
「そんなら俺、ちょっと調理道具買ってくるよ。そういえば食器もないし食器も。何がいるの?」
「おー、それが良い。ひとまずお皿にフォークに、包丁とまな板、フライパン、あとは鍋だな。あ、それと調味料もないよな? まず塩とコショウと――」
アンチョビの並べる名詞が思いのほか多いので慌ててメモる。
24: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:19:47.63 ID:ema8T1+O0
自転車でららぽーとへ。
言われたものを購入して家へ戻ると、19時すぎだ。
「急いで作るからな」と言うアンチョビは30分ほどで調理を終える。
25: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:22:39.66 ID:ema8T1+O0
2017年11月6日。月曜日。
少しだけ痛みの残る頭を抱えながら寝室を出ると、普段の我が家にはない香りが漂っているのに気付く。
違和感を覚えながらもシャワーを浴びて洗面室でじゃこじゃこと歯を磨いていると、「おはよお」と声が聞こえた。
視線を送ると、ドアの隙間から半分だけ、彼女が綺麗な顔を覗かせている。
26: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/15(日) 22:24:56.74 ID:ema8T1+O0
「じゃ、会社へ行くので」
ドアごしに洗面室の中へ声をかけると、すぐさまアンチョビの声が返ってきた。
「もう行くのか!? 朝食はどうした!?」
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