21:名無しNIPPER[saga]
2018/07/18(水) 19:17:08.78 ID:3Cm3aQej0
「危うく、サキュバスから精力を抜き取られるところでしたね。私が起こしたおかげです」
女が小指を突き立てながら言った。
指の先端がテカテカと光っていた。
「気のせいじゃなければ、鼻から凶器を刺されて殺されるところでもあったと思う」
「止むを得ずです。人工呼吸と一緒です」
「他に起こす方法は思い浮かばなかったのか」
「肩を叩く、声をかける、腕をつねる、身体を揺さぶる、他には、えーと…えーと…鼻の穴に小指を差し込む」
「それだけの選択肢からよく最後を選んだな」
「どうしましょう。異性とお付き合いをしたこともないのに、殿方の鼻の穴に指を入れてしまいました。将来私が昭和気質の大地主なんかと結婚することになったら、契りも結んでいない男の鼻に小指を入れた女として、破談になってしまうんでしょうか。大変です」
女はそう言って水道場まで走り、小指を洗い始めた。
「はぁー」
意味が不明だ。
だが。
こうやって、また、彼女に救われてしまう。
自分の身に纏う不可解や理不尽を、彼女の混沌や不条理が覆い尽くしてくれる。
それこそ、灰色を白で塗りつぶすかのように。
彼女に報いるためなら。
「大変です!早く来てください!蛇口をひねると水が流れ出しました!シャーシャーと、文明開化の音がします!!」
僕はきっと、この世界を黒で染めるのだろう。
27Res/22.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20