32:名無しNIPPER[saga]
2018/07/11(水) 22:40:44.17 ID:TUAcnqRm0
「――――このっ!」
そんな過去の忌まわしい記憶を辿っていた時だった。
背後にいた孫の次郎が私を突き飛ばした。それから私のコートを奪い取った。
これは覚えがある。あの時と同じだ…
「この………ババァッ!……の……せいで……彼女に……嫌われ……どうして……んだ…」
孫は私に向かって怒鳴り散らしていた。
耳が遠くなってしまったけどその意味はすぐに理解できた。
先日会ったあの可愛いお嬢さん。孫はあの子に恋心を抱いている。
そんなお嬢さんの前で身体が不自由な身内を晒せば軽蔑されると不安になった。
だから孫は私を…
「いい……気味……ずっと……そこ……いろ……」
辛うじて聞き取れたけど…
『いい気味だ。ずっとそこにいろ。』
孫は間違いなくそう叫んだ。それから孫はどこかへと立ち去ってしまった。
私はというと哀れみな声で目の前から遠ざかろうとする孫に助けを請おうとした。
『お願い!助けて!』
けど歳を取り呂律の回らなくなったせいで大声なんて叫べない。
それから孫もいなくなり辺りは真っ暗な夜になった。
寒くて…怖くて…暗い…この辺りには電灯すらない…
私は神社の境内で丸まりながらなんとか暖を取ろうと必死だった。
こんな形で死にたくない。その思いでいっぱいだった。
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