11:名無しNIPPER[saga]
2018/07/11(水) 22:17:51.74 ID:TUAcnqRm0
「あ…よし…こ…よし…こ…」
ちょっと…やめてよ…お爺ちゃんが私のことに気づいてしまった…
呼びかけただけじゃなく手振りしてまるでこっちに来いとジェスチャーしてきた。
それだけじゃない。このことに気づいた神崎くんが私の前に近づいてきた。
「キミは同じクラスの田中さんだよね。このお爺さんは身内の人なのかい?」
本当だったらちがうと答えたかった。けど神崎くんの前で嘘は付けない。
私は神崎くんの問い掛けに黙って頷くしかなかった。
「うん…この人は私のお爺さんだから…」
「そうか、お爺さんだけど自分の家がどこかわからないみたいなんだ。
けどキミだけじゃ大変だろ。俺たちもお爺さんを送るのを手伝うから案内してくれないか。」
きっと神崎くんは善意で申し出たんだと思う。けど私にはそんな余裕はなかった。
大好きな人に家族の恥部を見られた。
それはテストで先生から赤点を取ったとクラスのみんなの前で言い渡されるよりも恥ずかしいレベルだ。
神崎くんは善意で言ってくれてるし他の男子たちも快く協力を申し出てくれている。
それでもどうしようもなく嫌だった。
私は神崎くんたちの好意はありがたいけど自分で送ると言って申し出を断った。
こうして神崎くんたちと別れた私は惨めな気持ちでお爺ちゃんと自宅へ帰った。
自宅に帰ると居間に一枚の書置きがあった。書いたのはお母さんだ。
内容は買い物に行くから帰ってきたらお爺ちゃんの世話をお願いと記してあるだけ…
お爺ちゃんは何も言わずに黙って自分の部屋へと戻って行き私は居間に一人取り残された。
それから一人になった私はというと…
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