55: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:16:39.39 ID:LgMjPCNT0
その顔を普段よりもっと真っ赤に照らしたまま、
可憐ちゃんは自分のペースで続きを話す。
「……ほ、本番前に、頑張ろうねって声をかけてもらえると、
私、自分が強くなれるような気がするんです。
……出番が終われば、プロデューサーさんか紗代子さんの、どちらかが褒めてもくれるから」
そうして彼女は、「だから、怖くても最後まで頑張れて……。
その……。い、いつもありがとうございます!」なんて、大きく頭を下げたのだ。
私はそんな可憐ちゃんを前にして、驚き呆然と立ち尽くしているだけだった。
……私が勇気を与えてる? この私が?
学校じゃ堅物だって遠巻きにされて、
真面目になればなるほど煙たがられてるような存在なのに……。
ガツンと、頭を殴られたようなショックだった。
だって、劇場のみんながそんな私の振る舞いを少なからず受け入れてくれてるのは、
相談にだって乗ってくれるのは、そこに『お仕事』っていう最低限の繋がりがあるからだと思っていたからだ。
私が必要以上に見せてない、高山紗代子を知らないからこそ、
お互いに不快にならない距離を保ててるんだと思ってた。
なのに――。
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