37: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:49:00.08 ID:LgMjPCNT0
「……そうだよ」
掠れるような声で、答える。
「私、あの子の気持ちが分からない。練習しても役が掴めないんだ。
……どうしてあんなに楽しそうに、当ても無く壁を掘れるんだろうって納得できないままでいる。
最後の結末を知ってるから、どうしたってそれがチラついて、いつの間にか笑顔でいられなくなってるの」
「でも台詞は覚えられるんでしょ? 初めてなら、人前であがらずにいれれば上々だよ」
でもそれは、私が知りたい助言じゃない。
思わず表情を硬くすると、桃子ちゃんは後ろめたげに小さく首を縮め、
音を立てながら持っていた本を閉じた。
「……役作りはね、自分を造り変えるんだよ」
そうして、謝罪の代わりに答え始める。
「演じる役になりきるの。本を読んで、想像して、その役がどんな考えを持ってるのか、
どんなことをする人なのかを自分の中に取り込んでく」
「それは、琴葉さんも言ってたかな。自分と役を合わせて行くって」
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