藤原肇「外は雨の、こんな時」
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12: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:18:27.76 ID:/XOMflwr0


 ふうと息を吐いて、私はドアを開きました。

「肇ちゃん、お届け物が来てたわよ」
以下略 AAS



13: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:18:54.10 ID:/XOMflwr0


 しばらく寮母さんとお話した後、私は窓際へと向かいました。見える風景は、朝よりも縦線が多く混じっています。

 万一の可能性に期待して、心を騒がせて、情けないやら悲しいやら。何だかとても滑稽で、私は部屋でひとりクスクスと笑ってしまいました。来るはずがないと分かっているからこそ、彼がいてくれたら、という気持ちがますます募ります。
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14: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:19:28.05 ID:/XOMflwr0


 部屋着から着替え、おめかしをします。服もお気に入りのものを選びます。そして、髪の毛を櫛で整えようとしたとき、そばのカゴに入れてあった青色の髪留めが目に留まりました。以前、彼が私に買ってくれた代物です。「似合うと思うから」とプレゼントしてくれた、青いリボンのついた髪留めです。

 やっぱり、彼と結びつけてしまうなあ。でも、仕方ないのかも。だって、一番素敵な姿を見せたくなるんです。貴方は気付いてくれるかな。
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15: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:20:41.16 ID:/XOMflwr0


・・・・・・


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16: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:21:29.31 ID:/XOMflwr0



 雨は嫌いではありません。さっきのように、雨の音を聴きながら外を眺めるというのも、趣があって私は好きです。だからといって、こんな本降りの雨の中を好きこのんで出歩くなんてことは流石にありません。さらにはこの後もっと強く降るというのに、わざわざ外に出るなんて酔狂なことです。せっかくのお召し物も台無しになるかもしれないのだから。

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17: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:22:50.87 ID:/XOMflwr0


 やっぱり、私、貴方のことが好きなんだろうな。だから私は会いに行くのです。

 心なしか、胸の中を覆う雲が薄れるような心地がしました。
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18: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:24:00.09 ID:/XOMflwr0


 突然、私が事務所にやって来たら、びっくりするでしょうね。でも、理由を聞かれたら、何と答えよう。「部屋で過ごしてたけど暇になってしまって」というのは何だか味気ないでしょうか。いっそ、正直に「貴方に会いたくなりました」と言うのも……。これはちょっと恥ずかしいかな。


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19: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:24:42.58 ID:/XOMflwr0


 事務所のある建物に入ると雨音は小さくなりましたが、よく見るとスカートの裾や上着の袖口が湿っていました。雨は強かったけれど、風が無かったためか、ひどく濡れるということはありませんでした。ほっと一安心です。服の色濃くなった部分を、持って来たタオルで丁寧にふき取ります。そして、髪の毛も少し乱れていたので、手鏡を見ながら整えます。……よし。準備万端です。
 
 この扉の向こうに、あの人がいる。急く気持ちが抑えられず、私は躊躇うことなくドアノブを回しました。
以下略 AAS



20: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:25:39.34 ID:/XOMflwr0


 事務所に入ると、ほとんど人が出払っていました。いつもは賑やかなのに、アイドル達のかしましいお喋りも聞こえません。彼のデスクの方を見遣ると、彼の姿もありません。出かけている? そんなことはありません。昨日、彼は「一日中事務所かなぁ」と今日の予定を言っていたのだから。


以下略 AAS



21: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2018/07/04(水) 22:26:39.44 ID:/XOMflwr0


「あら、肇ちゃん?」

 ちひろさんがデスクから声をかけてきました。
以下略 AAS



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