【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」
1- 20
455:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/27(金) 02:24:47.47 ID:AGdfprM60
 それは、紅莉栖が団扇代わりに使っていた、厚紙のようなもので──

『いや、厚紙というよりは……』

 厚紙と思っていたそれは、ただの紙というには妙に膨らんでいる部分があった。そしてよく見ると、大きく張られたシールに、英語か何かの文字がしたためられている事に気付く。

『宛名……国際便の荷物? こんな物、ラボにはなかったはず』

 そこで、厚紙というよりは、封筒に近いそれが、紅莉栖の個人的な所有物であると言う事に、今更ながらに気がついた。

「それはなんだ? 外国からの届け物かなにかか?」

 俺は、それの正体を紅莉栖に問いかける。

「そ。この前、届いた。……でも、中身はただのゴミ。可燃物と不燃物が少々かな」

「ゴミ……か」

「そ、ゴミ。でもこれね。実はサイエンス誌に無理言って送ってもらったの。まさか本当に送られてくるとは思ってなかったけど……。少し、誤算かな」

 紅莉栖は折りたたんだヒザに顔を埋め、そして『届かなければよかったのに』と、『届かなければ、まだここにいられたかもしれないのに』と、かすれる声で呟いた。

 なぜだろう。紅莉栖のその言葉が、妙に居たたまれなく思えた。

「そう言うな。死に別れるわけでもない。記憶を失うわけでもない。ただ、アメリカへ帰るだけなのだろ?」

 落ち込み始めた紅莉栖を、慰めようとでも言うのだろうか?
 俺はそんな言葉を口にしながら、しかし同時に『アメリカか……』と、その遠さに途方にくれていた。

 パイロットでもない、ビジネスマンでもない、スポーツ選手でもない、ついでに金もない。そんな俺にとって、海を越える場所が、いかに遠方なのか、想像に固くない。だが、俺は言う。

「寂しくなったら、いつでも言って来い。なにせ俺は、まゆりを救うために、地球の反対側までいった事だってあるのだ」

 できない事は、言うべきではない。しかし、今だけは──

「アメリカなんて、ご近所づきあいと大差ない。いつでも行ってやる」

 そんな思いで、ご近所づきあいなどした事もない俺が、身の程をわきまえぬ発言を呈する。
 そんな俺の言葉を聞き終えると、紅莉栖がうつむけていた顔を、微かに上げた。

「嘘でも、うれしい。……少しだけな」

 そして紅莉栖は立ち上がる。

「一度、ホテルに戻る。夜にもう一回来るから、その時に……」

「分かった。その時には約束どおり、全て話す。お前を助け出したときの、俺の主観を」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
522Res/550.65 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice