【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」
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456:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/27(金) 02:25:38.78 ID:AGdfprM60
 俺の言葉に、紅莉栖が微かに頷いてみせた。そして、ゆっくりとした、まるで後ろ髪でも引かれているかのような足取りで、ラボの出口へと向かう。

 そんな紅莉栖の後姿に、俺は声をかけた。

「待て、紅莉栖」

 その言葉に、紅莉栖の歩みが止まる。それを確認した俺は、壁から背を離し、ラボの隅へと向かった。

 確か、そこに在るはずなのだ。紅莉栖に渡すべき物が、その場所に転がっているはずなのだ。

「まゆり、すまないが、少しどいてくれるか?」

 一心不乱にミシンと格闘していたまゆりに声をかける。目測では、その辺りに在るはずなのだ。

 しかし、俺の呼びかけに、まゆりは反応を示さず、ただ黙々とミシンを動かしつづけ──

「なぜ泣いている、まゆり?」

 その光景に、俺は驚く。そして俺の言葉を切欠に、まゆりの肩が大きく震えだした。

「まゆしぃは……泣いてなど、いないのです……。寂しいけど、でもクリスちゃんが自分で決めた事だから……まゆしぃが泣くわけ、ないのです……」

 俺はそんなまゆりの反論に、「そうか。ありがとな、まゆり」と返す。きっとまゆりは、泣けない誰かのために、代わりに涙を流していてくれていたのではないか──などと、取りとめもない事を考えてしまう。と──

「オカリンが探してるの、これ……かな?」

 そう言って、まゆりは俺に握った手を差し伸べた。手を開くと、そこには金属製の小さな人形。まゆりの手に、メタルウーパが転がっていた。

「まゆしぃにはよくわからないけど、でもオカリン。メタルウーパはクリスちゃんが持っていた方が、いいんだよね?」

 俺は、まゆりのその言葉に、黙って頷く。そして、そっとまゆりの手から、小さな丸い人形を掴み取ると──

「約束の証だ。持っていけ」

 そう言って、まゆりから受け取ったメタルウーパを、紅莉栖に向けて、軽く放る。

 銀色の想いが、ラボの空間に、一筋の軌跡を描いた。

「ナイスキャッチだ、助手よ」

 親指を立てた拳を、紅莉栖に向けて突き出して見せる。

「いいの……?」

「ああ。お前に持っていて欲しい」

「……格好つけすぎだ。岡部のくせに」

 紅莉栖の言葉に、思わず苦笑いが浮かぶ。

 そして紅莉栖は、まゆりに「ありがとう」と、俺に「また後で……」と言い残すと、ラボの扉から姿を消した。

 俺はそんな紅莉栖の後姿を想いながら、ミシンを前に大粒の涙を零し続けるまゆりの頭に、そっと手を乗せた。









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