【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」
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454:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/27(金) 02:23:51.73 ID:AGdfprM60
 そう、分かっていたのだ。
 いつか、この瞬間が訪れると言う事は、重々に承知していたのだ。そしてそれが、取るに足らない些細な問題だと言う事も、理解していたのだ。

 エンターキーを押した時に比べれば──
 病院のベットで、紅莉栖を諦めた時に比べれば──
 ラボの扉越しに、紅莉栖を拒絶してしまった時に比べれば──

 初めから予定されている紅莉栖の帰国など、大した問題ではないはずだったのだ。だと言うのに──

『あまりにも、いきなりすぎる……だろ』

 予測していたはずの、予期せぬ出来事に、心の準備は追いつかなかった。

 思わず、奥歯を噛みしめそうになる。思わず、拳を握り締めそうになる。
 しかし、そんな湧き上がる衝動を無理やり飲み込み、浮かせた背中を、無理やり壁に押し付ける。
 そして、言う。

「急な話だな」

「ごめん。もっと早く言うべきだった」

「謝る事はない。お前の帰国など、初めから想定内だ。気にするな」

 心にもない台詞を吐く。そんな俺の言葉に、しゃがんだままの紅莉栖が、微かに肩を震わせた。

「私が帰ると言っても、意外と冷静なんだな」

「想定内だと言っただろう。それに、二度と会えないわけでもあるまい。それとも何か? 仰々しく騒いで引き止めて欲しいのか?」

 できれば、そうしたい。声を振り絞って、『どこへも行くな』と、『俺の側にいろ』と叫びたい。だが、それはできない。

 紅莉栖には紅莉栖の、事情と言うものがあるのだ。

 だから、そんな本音を包み隠し、軽い口調でおどけてみせる事しか、出来なかった。

 そんな俺の姿を瞳に映し、紅莉栖は──

「それは……困るな」

 そう言って、微かな微笑みを作る。

「ママとの約束だから。今まで無理言って、滞在期間を引き延ばしてたから」

「そうだったのか?」

「そう。適当な理由を付けてね。最初は、あんたを探すための時間が欲しかったから。で、色々と思い出してからも、少しでも長くここにって……そう思って。でも、それももう終わり」

 紅莉栖は俺から視線を外すと、自分の傍らに置いてあった団扇の代役を手に取って言う。

「だって、届いたから。だから、ママとの約束も、ここでの生活も、けじめをつけないと」



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