3: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2018/06/23(土) 12:08:33.18 ID:Rs9/yfEgO
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高森藍子
梅雨の曇り空の下、散歩の足取りもちょっとぐずついて。
湿った地面に湿った空気。これ以下とないコンディションの中、どうして散歩に出かけてしまったんだろうってちょっと後悔したりもして。
写真に撮りたいような景色もないなか、私はぶらり、ぶらりと宛てもない散歩をだらだらと続けている。
帰ろうか、でも今帰っても。そういう心の迷いが、私を突き動かしていた。
ふと、気づくと誰かの歌声が聞こえてくる。いや、風の音がそうさせたのかもしれない。
その声は涙交じりで、悔しそうに聞こえてきたけれど、それでも力強く前に進もうという気持ちを感じた。
負けないで。
いつのまにか、私はただの勘違いかもしれないその歌声に聞き入っていた。聞き入って、そしていつの間にか、その声の主に対して声援を送っていた。
でも、消えていく。かすれていく。私はそれが悲しかったけれど、でも、その声の主を応援することをやめなかった。
らんらんらん、らんらんらん。
気がつけば私も、名前のない歌を歌っていた。
ららら、るるる。るらら、るらら。
私に散歩を続けさせてくれた、いるかもわからないその歌声の主に届けと言わんばかりに、私は精一杯明るく歌い続けた。
気がついたら、雲が晴れて、傾いた太陽が私を照らしていた。
この歌はなんだったっけ。なんて思いながら、私の散歩は続いていく。
歌声は、小さなビル街の間で相応に小さく響いた。
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