5: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/06/15(金) 01:45:36.98 ID:qFXEoNRp0
「こちらが私の家で一番えらい神様です」
村人はかまどを指さした。目をこらすと、灰の中にいくつか、きらりと光るものがあった。
なるほど、そういう信仰もあるのかと旅人はかまどに銅貨をなげこんだ。
出すものは出した。旅人は椅子の背もたれに手をかけた。
「すわってもいいでしょうか」
「かまいませんが、その前にお供えをおねがいします」
旅人は顔をしかめた。かまどには今しがた銅貨をなげ入れたではないか。
「かまどには……」
「ええ。かまど様は一番にえらい神様ですが、その椅子もこの家では四番目にえらい神様なんですよ」
旅人は閉口した。それは彼が一神教の信徒だからではなくて、端的に自分がタチの悪い村に来てしまったことに気づいたからだった。
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