9:名無しNIPPER[saga]
2018/06/15(金) 00:26:17.39 ID:1KrY7Zfp0
「……全国、か」
たった一年ばかりの記憶が、もう既に遠く昔のことに思えた。
南中の全員で一丸となって挑んだコンクール。その晴れ舞台で、私たちの団体は、銀色に光る不名誉な称号を得た。
努力が報われないことなんて、普通に過ごしていれば、きっと誰しもが経験することで。
私だって頭では何度も自分にそう言い聞かせてはきたけれど、だけど、そうはいっても心の奥底にはいつだって割り切れない感情が沸々と過去の凄惨な記憶を思い起こさせる。
私たちは、あの日、負けたのだ。
コンクールという魔物に立ち向かい、それで、あっけなく負けてしまったんだ。
そのことを誰よりも悔しがっていたのは、部長を務めていた希美だった。
だからこそ、希美は、この部活で、この北宇治高校吹奏楽部で、今度こそ全国大会に行こうと考えている。
私も、その気持ちは同じだった。あの夢の舞台に立って、自分自身のトランペットを鳴らしたいと、本気でそう思っていた。
15Res/13.84 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20