54: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:31:30.75 ID:bVnO2WFP0
すると彼は、大真面目に私を見つめ。
「アナタが余りに魅力的な女性なので、このままだと夢中になり過ぎてしまいます」
……そういう事を、臆せず口に出してしまえるのは実に、
褒めるのが仕事のアナタらしいですね。
でも、だからと言って、私は。
「……いけない人!」
分かりましたと言う代わりに、はにかんで顔を伏せました。
そうしておずおずと左手を前に出すと。
「ならせめて……手を、繋いではくれませんか?
この広場を出るまでで構いません。……私にとっての初めてを、アナタが」
広場の前に通る道路を数台の車が通り過ぎる。
その度に、ライトで浮かび上げられる二人の影。
暫くするとその一方が、そっと静かに近づきました。
「――ありがとうございます。プロデューサーさん」
手袋越しでも感じられる、私を導く確かな伝手。
先ほどまでとはうって変わり、緊張した面持ちになった彼が仰います。
「そ、それじゃあ行きましょうか。とにかく駅か、バス停に」
「はい」
私は今日一番の素直な返事をすると、
彼にその手を引かれるまま広場の出口に向かって歩き出したのです。
――けれども、初めは大股だった彼の歩調が、だんだんと間隔を狭めていく。
そしてとうとう、出入り口まで後数メートルといったところで完全に足を止めてしまい。
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