27: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/06/11(月) 20:37:25.95 ID:4HE2LzfA0
私の返事に、溜め息。
父は釈然としない気持ちを飲み込むようにコーヒーカップに口をつけて
――それからしばらく黙った後、
詰問するような視線をこちらに投げかけ言ったのです。
「歌織、例の高木っていう青年が一緒なのか?」
その名前をこの場に出された瞬間、
動揺のあまり紅茶でむせそうになりました。
それでも何とか噴き出すのだけは堪えると、
私は努めて平静を装いつつカップをテーブルへと戻し。
「……それが何か?」
「一緒なんだな」
「だったらどうだってお父さんは――。
あの人は私のプロデューサーなのよ? 当然、お仕事だったら一緒でしょう」
居心地の悪さが紅茶の味さえ忘れさせる。
父だってもう、朗らかな笑顔ではありません。
難しい顔で腕を組んで、低く唸る姿はここを仕事場と勘違いしてるみたい。
――でも、だからと言って目を逸らすワケにはいかないから。
「アナタ」
その時、今の今まで我関せずといった態度だった母が初めて口を開きました。
気が立つ私達の関心を集めても、彼女はまるで堂々としたまま
テーブルの上に置かれたテレビリモコンをその手に取り。
「この子だってもういい大人なんですから、殿方との付き合い方ぐらい。……歌織も分かっているわよね?」
消されていた居間のテレビに電源が入る。
場違いなバラエティーショーの再放送。
底抜けに明るい、わざとらしい笑い声が辺りの空気を変えていく。
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