12: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/06/07(木) 19:48:37.34 ID:ODZrmv780
だが謝らないワケにもいかない。
言って、俺は体の向きを変えようと身をよじったのだが。
「動かないでください!」
志保の叫びがたちまち俺を石に変える。
若干涙声だった気がしないでもない彼女は慌てた様に俺の肩を掴むと。
「もうこれ以上、恥ずかしい思いはしたくないですから。そのままでいいです、寝てていいです」
「いや、この姿勢以上に恥ずかしいことは――」
「だから見られたくないんです、もう!」
怒ったようにそう言って、彼女は俺の後頭部をぎこちなく片手で抑えつけた。
むぎゅ、と柔らかなお腹が顔に押しつけられる。
思わずおおっ!? なんて喜べるほど俺も神経が太い男じゃない。
早速、視界を塞がれたことで戸惑い抗議の声を上げたのだが。
「だから、動かないでください……!」
今度という今度こそ本当に、激しい怒りを孕んだ警告を返されてしまった。
いくら恥ずかしがってるからと、こんな時に持ち前の意固地を発揮しなくてもいいだろうに……。
俺はまるで、罠に掛けられた獲物のようにこの場からの脱出を諦めると。
「分かった、大人しく眠るよ……」
「……はい、それでお願いします」
そうは答えたものの、中々に難しい注文だぞ、これは。
意識するなというのが無茶な話。
なにせ息を吸ったり吐いたりする度に、
俺は彼女の香りと熱を胸いっぱいに吸い込むことになるのだから――。
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