13: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/06/07(木) 19:49:52.88 ID:ODZrmv780
だが、体は身じろぎできなくとも、時間はお構いなしに流れていく。
例え数秒が数分、いや数十分に感じられるような長い体験でも、
時間だけは止まることなく進み、状況に変化を与えてくれるのだ。
……志保が動いた気配を感じられた。
まんじりともせずに浅い呼吸を繰り返してた俺の髪に、そっと掌が乗せられたことを知る。
「眠るには目を、つむらないと」
彼女の囁き声はもう、幾分かの落ち着きを取り戻していて。
まるで警戒する動物の機嫌でも取るように、志保はその手を柔らかく動かし俺を撫でる。
……すると不思議なことではあるものの、猫の毛並みにでも触れているようなその動きは、
ひと撫でごとに俺の体から硬さを取り除き、次第に忘れていた睡魔を思い出させるほどの心地良い安らぎを生み出した。
そのうちに、彼女の陰が作り出した暗がりは穏やかな微睡みへと俺の意識を誘って。
「……いつもお疲れ様です。ゆっくり休んでください」
自分の物だと分かる寝息に混じって、
そんな志保の声が聞こえて来たような気がしたが……
その時になると既にもう、俺はぎこちない優しさと緩やかな眠りにすっかり包まれていたのだった。
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