【モバマスSS】愛を知らない一ノ瀬志希と彼らの巡礼の旅
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44: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:56:54.26 ID:dFhLHRCO0
この事務所の社長に拾われたのは俺の人生において最大の幸運であり不運だっただろう。プロデューサーという職業は俺の天職で天敵だった。
人を導く事自体は、別に嫌いじゃない。担当しているアイドルが壁にぶつかりながらも成長してゆく光景を見るのは、好きだ。
しかしそれと同時に、この業界には余りにも才能が溢れている。何かしらの才を持たぬ者は、ここには入れない。そんな環境の中で、俺は身を焼くような嫉妬と憎悪に苛まれた。
何度も何度も、己の担当アイドルにさえも。何故俺にはあのような才能が無いのか。羨ましい。妬ましい。ああ、しかし、その輝きを磨く手助けをせねばならないのもまた俺であり、俺自身もそれを望んでいる。
そんな自家撞着を繰り返しながらも、なんとか今、人としての形を保っている。


45: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:57:32.56 ID:dFhLHRCO0
しかし、そんな俺がよりによって指折りの天才……ギフテッドたる一ノ瀬志希の担当をしている。
我ながら滑稽な事だが、実のところアイツをスカウトしたのも、担当したいと進言したのも、俺自身だ。
脳裏に志希を思い浮かべる。
アイツはいつも笑っている。気紛れに俺をからかっては、ころころと喉を鳴らすように。アイツの側にいると、劣等感で頭がどうにかなってしまいそうになるのに、心の底で、アイツの側に居たいと思っている俺がいる。
他のアイドル達には傷付けてしまわないように距離を置いているのに、志希にだけは何故か……


46: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:58:07.57 ID:dFhLHRCO0
あぁ、ちくしょう。

分かっていたことだろうに。
気付いてはならないものなのだと。
アイツを初めて見た瞬間、俺は息を呑んだ。そして大きく、溜息を吐いた。運命というものは確かにそこにあるのだと、受け入れるように。
以下略 AAS



47: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:59:13.49 ID:dFhLHRCO0


とある小さな山の中腹。
だぁれも居ない夜の公園。
アタシは一人でゆらゆらと、ブランコを揺らす。お空は雲ひとつない快晴。
以下略 AAS



48: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:59:55.73 ID:dFhLHRCO0
「……こんの……バカ猫娘ェ!!!」

ゴツン!
彼は見事にアタシを受け止めたかと思うと、流れるように頭突き。即座に手を離されて、アタシは額を抑えて地面にへたり込む。うーん、見上げてないのにお星様がみえるよー……

以下略 AAS



49: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 02:00:34.30 ID:dFhLHRCO0
「お前、最初は帰ってくる気無かっただろ」

「あ、バレた?あいたっ」

ノーモーションでデコピンの接射はずるいと思うなぁ……
以下略 AAS



50: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 02:01:19.63 ID:dFhLHRCO0
「でも珍しいのはキミもじゃない?いつも迎えになんて来ないのに」

「……ここにお前がいる気がした」

「にゃはー、以心伝心だねぇ。アタシもここで待てばキミが来ると思ったんだー」
以下略 AAS



51: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 02:01:56.81 ID:dFhLHRCO0
「ほれ。ブラックでいいか?」

「わとと」

彼は遊歩道沿いの自動販売機でブラックの缶コーヒーを二つ買って、一つをアタシに投げ渡した。そして横のベンチにどさりと腰掛け、隣をポンポンと叩きアタシに座るよう促す。
以下略 AAS



52: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 02:02:39.29 ID:dFhLHRCO0
それだけが、分からなかった。
忌避、嫉妬、憎悪、諦念。彼が「天才」という概念へ抱いている感情。
彼にスカウトされてしばらく一緒にいれば、否が応でも理解できるそれら。
これは分かる。だってアタシが失踪する直前に、ダッドに抱いていた、抱いてしまった感情と同じだから。
でも彼は失踪しない。アタシはした。その違いは?
以下略 AAS



53: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 02:03:37.81 ID:dFhLHRCO0
ますます分からない。
アタシがプロデューサーの側に居る理由。それは彼が興味深いから。どれだけ観察をしても、飽きることがないから。
ホントウに?
観察は得意だ。彼の言動行動の癖、傾向、趣味趣向、嫌いなものも、おおよそ把握できていると思う。そう、本来なら彼の観察はとうに終わっているはず。それなのに、アタシは観察を続けている。
それは何故?
以下略 AAS



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