【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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847: ◆eltIyP8eDQ[saga]
2019/02/09(土) 21:25:04.01 ID:5zdhLM0A0





山頂よりちょっと下のあたりだろうか。依然戦車の前には道が続いているものの、それはふもとへ下りるための道、ここは折り返し地点という事か。

私の視線の先には山頂まで続いているであろう階段がある。


みほ「……ここが目的地、かな」

小梅「……はい。でも、もうちょっと」


赤星さんは戦車から降りると再び懐中電灯を手に階段を上り始める。

明りを持ってない私は慌ててその後をついていく。

そして今度こそ、私たちは山頂へとたどり着いた。


小梅「……どうですか?」

みほ「……綺麗だね」


山頂から見下ろす夜の街は点々と、明りがまるで星のように輝いている。

黒森峰の学園艦が大きいのは知っていたが、こうやって一望するとその大きさを実感できる。

私は地べたに座り込んでじっと、その景色を見つめていた。

すると、同じように隣に座っていた赤星さんが口を開く。


小梅「私、ここに結構来てたんですよ」

みほ「そうなの?」


山登りが趣味だなんて聞いたことがなかったけど。私の疑問に赤星さんは直ぐには答えずじっと街明りを見つめる。


小梅「……昔、私が不貞腐れてた頃。何もかも忘れたくてこの山を登ったんです」

みほ「ずいぶん体育会系だね」

小梅「あはは。戦車道やってるんですからその通りでしょう?」


言われてみればその通りだ。赤星さんも、私も。……あの人も。毎日のように体を動かして、冬でも汗まみれになってた。

昨日のように思い出せるその光景。その思い出に意識が遠のきそうになるのを頭を振って耐える。


小梅「……夕方から登り始めて、登り切ったころにはもう真っ暗で、代わりに街と星と月がキラキラと輝いていました」


「残念ながら今日は街明りだけですけどね」赤星さんはそう言って苦笑する。


小梅「別に、この夜景を見たから奮起したとか、そんなドラマチックな事は無いですけど。

   それでも。あなたの優しさに救われるまで私が逃げ出さなかったのは、この景色があったからかもしれません」


あなたの優しさに救われた。赤星さんはそう言うものの、私はその事をよく覚えていない。

あの頃の私は赤星さんも気づいていた通り自分の事しか見てなくて、上っ面の言葉しか人にかけていなかったから。

だから、救われた。だなんて大仰な事を言われても私はどう返せばいいのかわからない。

それは多分赤星さんも察しているのだろう。私の返事を待たずに話を続ける。


小梅「人間、もう駄目だ。なんて思ってても、なんてことない事でとりあえず明日も頑張ってみようってなるのかもしれません」


さっきより少しだけ薄くなった雲がそのベールを通してわずかに月光を降ろす。

暗闇に慣れた目で辛うじて見える赤星さんの横顔は真剣で、辛そうだった。




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