【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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822: ◆eltIyP8eDQ[saga]
2019/02/02(土) 21:49:52.76 ID:fXHa/LYp0





その日の夕方、いつもの様に扉の前にやってきたお姉ちゃんの声は、何かをこらえるように重く、沈んでいた。


まほ『みほ。赤星と何かあったか?』

みほ「……別に」


ただ、思っていたことを言っただけだ。


まほ『……赤星はあの事故以来、前以上に頑張ってるよ。あいつだって辛いだろうに、苦しいだろうに。それでも、前を向いているんだ』

みほ「嫌味?」


今もこうやって扉越しじゃないと人と話せない私を笑いたいのか。別に、それでも構わないけど。

他でもない私がそんな自分を嘲笑っているのだから。


まほ『違うっ、違うんだみほ……ただ、私は……お前たちがまた以前のように戻れればと……』

みほ「赤星さんにも言ったけどね――――無理だよ。そんなの」


なんで二人とも同じことを言うのだろうか。

なんで、未だに以前のようにだなんて思えるのだろうか。

失ったものの大きさは同じじゃ無かったのか。赤星さんの悟ったような、諭すような声が蘇り、私は口の端を噛みしめる。


みほ「エリカさんがいないのに元通りなんて無理に決まってるでしょ。……赤星さんはそうじゃなかったみたいだけどね」


恨みがましくつぶやいた言葉にほんの少しだけ失望が入り交じった事に気づく。

もしかしたら私は、赤星さんに期待してたのかもしれない。彼女なら私の気持ちを理解してくれるかもと。

理解なんて求めたところで意味なんて無いのに。分かり合えたところであの人は帰ってこないのに。


まほ『赤星だってエリカの事が辛くないわけじゃないっ!そんなの、お前だってわかってるだろう!?』


お姉ちゃんの泣き叫ぶような問いかけ。それが、妙に耳に響いて思わず顔をしかめる。

ああ、お姉ちゃんも赤星さんと同じか。エリカさんのことをもう過去にしてる。

私の中のエリカさんまで過去にしようとしてる。

そんなの、嫌だ。だから、言ってしまおう。

私はごん、と。後頭部を扉に打つ。


みほ「お姉ちゃん。私ね、赤星さんにこう言ったんだ。『あなたより、エリカさんを助けたかった』って」

まほ『……なんで、そんな事を』


呆然と、震える呟きに私は淡々と返す。


みほ「別に。前々から思ってた事を伝えただけ」

まほ『お前ッ……』


拳を叩きつけたのだろう。大きな音とともに扉が揺れる。

久しぶりに感じるお姉ちゃんの怒り。

それも、私の心に何の揺らぎも起こさない。


みほ「赤星さんだけじゃない。操縦手の子も砲手の子も通信手の子も。放っておけばよかった。エリカさんだけ助ければよかった」




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