【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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715: ◆eltIyP8eDQ[saga]
2018/12/23(日) 22:58:02.91 ID:8Wy7TEBX0
エリカ「……私たちは太陽があるから生きていられる。熱を、光をもらって。だけど、それは時に命を奪うこともあるわ。
誰も太陽に近づけないし、直接見ることはできない」
みほ「……そうだね」
エリカ「でもね、月は違う。太陽の見えない夜でも、太陽の光を私たちに届けてくれる。その光は、私たちに熱をくれないけれど、この世のどんな宝石よりも美しい光だと思うわ」
エリカさんは月を掴もうとするかのように空に手を伸ばす。
煌々と、どこか揺らめくように降り注ぐ光はエリカさんの手をすり抜けて地面に彼女の影(シルエット)を映し出している。
二度三度、零れ落ちる光を掴みとめようと指を動かし、やがて諦めたように手を落とす。
エリカさんは何もない手のひらをじっと見つめ、なのに嬉しそうに笑う。
エリカ「それに気づいたから、私は月が好きになった。誰かの力を借りたものだとしても、自分だけの輝きを持ってる。とても、素敵だと思わない?」
みほ「……うん」
月の美しさ。私はそれを貴女から教わったんだよ。
月明かりの下で微笑むエリカさんの姿が今でも心に残っている。
月光によって焼き付けられたその情景は私の価値観を変えてしまうほどの輝きを放っていて、
そう、ただただ素敵だった。
今のエリカさんのように、私の瞳を釘付けにした。
美しい記憶と美しい現実に心がいっぱいになる。
エリカ「みほ。あなたは誰かに阿って自分を変えられるほど器用じゃないわ」
みほ「え?」
エリカ「あなた、自分が思っている以上に頑固で不器用なんだから。自信をもってあなたのやりたいようにやりなさい。副隊長さん?」
その声は軽く、からかっているようにも聞こえた。
私のやりたいように。副隊長としての私にそう言った意味を考える。
西住流は『型』を大事にする。一糸乱れぬ規律と隊列こそ黒森峰が、ひいては西住流が強い理由なのだ。
そして戦車道は心を鍛える武道なのだから、在り様もまたそれに足るものであるべきだから。
自分を厳しく律する。西住流の娘ならなおさらだ。
それを間違ってるだなんていうつもりは無い。きっと正しいのだろう。
ただ、時折思ってしまう。もっと、自由に戦車に乗りたいと。
……いや、ちょっと違う。
今でも戦車に乗ることは楽しい。戦車道も、楽しい。
そう思えるようになった事自体、かつての自分を思うと信じられない事なのに。
乱れぬ隊列に美しさ。セオリーに則った作戦で正面から戦う事の楽しさ。
それらは確かに私の中にあるものだ。
でも、ふとした瞬間思ってしまう。伝統やセオリ―じゃない私の、私だけのやり方をやってみたい。と。
もちろんそんな考えすぐに振り払って目の前の事に集中する。
……そんな事を何度も繰り返してきた。
エリカさんは私のそんな迷いを知ってたのかもしれない。
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