4:名無しNIPPER[saga]
2018/05/27(日) 22:10:13.15 ID:XZfyulsZ0
妹が、目を輝かせて俺に駄菓子を要求している。
俺は苦笑しながら、その店を見る。
入り口が開いたままのそこに、人影は微塵も見当たらなかった。
どうやら留守にしているらしい。いくら最近は客が居なくなったとはいえ、店を空けたままにするのは防犯上どうなのだろうか。
兎角、店主が居ない事には買い物もしようがない。
妹にそう伝えると、彼女は少し残念そうにしながら、踏んでいた駄菓子屋の看板から足を退ける。
さあ、もう行かないと。時計を見ると、もう一時間目の授業が始まろうとしていた。
俺は床に散乱する駄菓子を踏みつけながら、通学路に戻った。
通いなれた道を進みながら、息を吐く。
妹はきょろきょろと辺りを見渡して、何かを見つけては、それを逐一俺に伝えていた。
何度同じ道を通っても、彼女に飽きたという様子は見られない。
いつもいつも楽しそうに、それを進んでいく。
そしてそんな妹を見るたびに、俺もまた、この通いなれた道が新鮮に思える。
空を見上げる。
満点に広がるのは夜空。
俺たちを祝福しているかのように、ちかちかと瞬いている。
俺が空を見ていることに気付いたのか、妹も空を見上げる。
もう何度も見た星々に、妹は嬉しそうに頬を緩めて、星を指さしていく。
しし、おおぐま、こぐま、うしかい、へびとへびつかい、てんびん、やまねこ、ふたご……
そしてその中心で浮かんでいるもの。
その星座と同じ乙女の微笑みを、彼女は浮かべていた。
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