6: ◆hQrgpWdMp.[saga]
2018/05/15(火) 21:49:38.31 ID:TeqkJU5v0
ヴァルフリートからの許可はあっさりと降り、リーシャは父の用事が終わるまでの間ジータの家で暮らすことになった。
グランアインスで出る食事とは比べるべくもないがジータの心の籠った夕食を食べた後、2人は寝室に向かった。
「ベッドは1台だけなんですか?」
「うん。私とビィしかいないから」
1つしかないベッドを見て訝しるリーシャにジータは答えつつ、掛布団を捲り上げてベッドの中に滑り込む。
「ビィさんといつも一緒に?」
「そうだよ。ビィを抱っこして寝るの」
「抱っこ? もしかして、ビィさんは人間じゃないんですか?」
その言い回しに違和感を覚えてリーシャは問いかけた。
「ビィはねぇ、喋るトカゲ!って言ったら怒るドラゴンなの。小っちゃいんだけどね」
ジータの答えを聞いてリーシャは驚きを隠せなかった。てっきりビィはジータの保護者だと思っていたからだ。
ヴァルフリートと旧知の仲だというのもそう思った理由の1つだった。
(小さいということはまだ子供のドラゴンということ? 父さんは一体そのドラゴンに何の用があるの?)
疑問が頭をもたげたがそれよりもまず気になったのは、
「じゃあ、ジータは保護者なしでここに?」
ジータの保護者についてだった。まだ幼い少女は両親も親戚もなしに子供1人と子供のドラゴン1匹だけで暮らしているというのか。
「そうだね。でもたまにアーロンのお父さんとかが見に来てくれるし、村の人はみんな優しいからへっちゃらだよ!」
そう言ってジータは笑ってみせる。しかし、先ほど1人になってしまうことを恐れていた姿を見ているリーシャには、それが強がりであることがすぐに分かった。
「では、今日はビィさんの代わりに私を抱っこして眠ることになりますね」
「えっ?」
そう言って自分もベッドの中に入り、自分を優しく抱きしめるリーシャに呆けた声をあげるジータ。
「ビィさんほど抱き心地はよくないかもしれませんけどね」
「……ううん、そんなことない。あったかくてやわらかくて、安心するよお姉ちゃん」
冗談っぽくいうリーシャの言葉にジータは首を振り、自分もリーシャの体に小さな手を回して抱きしめ返す。
「それはよかったです」
「むしろビィを抱っこするより……気持ち、よくて……」
「今日は色々ありましたからね。ゆっくり休んで明日いっぱい遊びましょう。おやすみなさい、ジータ」
心地よさそうな声で船をこぎ始めたジータの頭を優しく撫でて、リーシャもまた瞼を閉じて眠りに落ちていく。文字通り夢見心地になるほどの幸福感に包まれて。
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