ジータ「リーシャお姉ちゃん」
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4: ◆hQrgpWdMp.[saga]
2018/05/15(火) 21:48:35.63 ID:TeqkJU5v0
「剣の練習のために魔物を倒そうと思ってここまで来たの。でも、本当に出てきたら怖くて動けなくなっちゃって……」

少女に乞われ手を繋いで家路を歩く途中、リーシャは少女がなぜこんなところにいるのか尋ねていた。

「そうだったんですね。誰だって最初はそういうものですよ」

「お姉ちゃんもそうだったの?」

「ええ。私だって最初は怖かったですよ。1人で魔物の前に行けるだけ勇気があると言えます」

「えへへ」

「その勇気で危うく死んでしまうところだったので、褒められることではありませんけどね」

「うう……」

リーシャは少女の勇気をほめ、蛮勇を窘める。しばし反省した様子だった少女だが、今度はリーシャに羨望のまなざしを向けてきた。

「でも、お姉ちゃんは怖いのに頑張って強くなったんだね! すごい!」

「いいえ、すごくなんかありません。だって私のお父さんは……」

少女の言葉を首を振って否定するリーシャ。周囲から向けられる感情のせいで本人ですら自らを卑下するようになってしまっていた。しかし――

「お父さん? どうしてお父さんの話になるの?」

「えっ?」

「お父さんがすごかったら、お姉ちゃんがすごくなくなるわけじゃないでしょ?」

不思議そうに首をかしげる少女の言葉。それは至極当たり前のことで、しかし、リーシャにとってはとても遠い言葉だった。

「で、でも、私の父さんは――」

「私のお父さんもねすごいんだよ? 星の島にたどり着いたんだもん! すごいでしょ! お手紙が届いたから本当のことだよ!」

震える声で言い淀んだ先の言葉を紡ごうとするリーシャを遮るように少女が続ける。

「でもね、私はお姉ちゃんが助けてくれなかったらさっきの魔物に殺されてた。全然すごくないよ。すごいお父さんの娘なのに」

「……っ!」

「だからね、お姉ちゃんがすごいのは、お姉ちゃんのお父さんがすごいからじゃなくて、お姉ちゃんが頑張ったからだよ」

リーシャは言葉を失っていた。少女のいうことは至極当たり前で、しかし、リーシャにとってはとても遠い言葉で――

「お姉ちゃんはとっても頑張り屋さんなんだね。えらいえらい」

それでも、その言葉と背伸びをしてリーシャの頭をなでる少女の手のぬくもりは、リーシャがずっと求め続けて来たものだったから。


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