3: ◆hQrgpWdMp.[saga]
2018/05/15(火) 21:48:04.28 ID:TeqkJU5v0
静かだからだろうか、どことなく神秘的な雰囲気も感じる森の中をリーシャは1人歩き続けていた。
(剣の修練をと思ってたのに、魔物が全然出て来ない……)
修練のために魔物を探していたのだがウルフの1匹すら現れる様子がない。森の中さえ静かで平和だった。
(もっと奥に行けば出て来るかな?)
そう思って奥へと進み続けていたときだった。不意に静寂を突き破って幼い女の子の悲鳴が響く。
「悲鳴っ!?」
リーシャが慌てて悲鳴が聞こえた方へと向かうと、6〜7歳くらいの少女がウルフの前で震えている姿が見えた。
ウルフは今にも飛び掛からんとしていたが、少女は頭を抱えてしゃがみ込んでしまっている。
「危ない!」
剣を抜き放ちウルフへと斬りかかるリーシャ。リーシャにかかれば魔物の中でも最低レベルに弱いウルフなど敵ではなく、その一閃で勝負は決した。
ウルフが首から血を流して息絶えているのを確認し、リーシャは恐る恐るといった様子で自分を見上げる少女に手を差し伸べた。
「もう大丈夫ですよ」
リーシャができるだけ優しい声で言って笑いかけると、少女は大きな瞳に大粒の涙をためてリーシャへと抱き着き泣き始めてしまう。
「え、ええっ!? もう大丈夫ですよ! もう、魔物はやっつけましたから!」
呼びかけても泣き止む気配がなくどうすればいいのかわからないリーシャは、とりあえずなだめようと少女の綺麗な金色の髪をなでた。
「もう大丈夫」と何度も言いつづけながらなでていること5分ほど、ようやく少女は泣き止んだ。
「ごめんなさい……」
「いいんですよ。怪我はしてませんか?」
「うん、してない」
消え入りそうな声で謝る少女にリーシャは首を振り怪我がないか確かめる。少女の言葉通り本当に無事であることを確認し、ようやくほっと胸を撫で下ろした。
「森の中は魔物が出て危ないですから、お家に帰りましょう。私もついていきますから」
「うん! お姉ちゃんがいたら魔物出てきても安心だよ!」
少女に呼びかけるとさっきまで泣いていたのが嘘のように元気に頷き、跳びあがるように立ち上がった。『お姉ちゃん』という呼ばれ方に少しくすぐったいものを感じつつリーシャも立ち上がる。
18Res/34.83 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20