ジータ「リーシャお姉ちゃん」
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10: ◆hQrgpWdMp.[saga]
2018/05/15(火) 21:51:43.20 ID:TeqkJU5v0

それは果たされるはずのない約束だと思っていた。しかしそれから10年近く経って期せずして果たされることになる。

エルステ帝国最高顧問として武力による侵略紛いの行為を繰り返していた七曜の騎士が1人、黒騎士。
秩序の騎空団の第四騎空艇団船長となったリーシャは、元船長のモニカと共にこれを捕縛。彼女が執拗に狙っていたある騎空団の面々を事情聴取に召喚するため会いに向かった。

数奇な運命により星晶獣の力を操る少女と一体化し、それがゆえにエルステ帝国に追われるようになってしまった少女。その騎空団の団長こそ成長したジータだった。

はじめて会ったとき、リーシャはすぐに彼女がジータであると気が付いた。10年もの歳月で更に可愛らしく成長していたが、まぎれもなく彼女であると一目でわかったのだ。
しかし、それをおくびにも出さず極めて事務的に接することにした。なぜなら彼女のお姉ちゃんはリーシャではなくセリアだから。

バレるわけにはいかなかった。彼女はもう七曜の騎士の強さをその身を持って知っている。あの日の『セリア』を『碧の騎士の娘』で塗りつぶすわけにはいかない。
10年間、あの日の思い出だけがリーシャの心の支えだったから。リーシャへの称賛に必ず混じる『さすがは碧の騎士の娘』の台詞を聞くたび、リーシャはあの日のジータの温もりを思い出して耐えて来たのだ。

共に行くことはできなくても憧れのお姉ちゃんのままでいられればとリーシャは口をつぐみ、ジータとは初対面であるように振舞った。

ジータも気が付いていない様子で2人は初対面同士として、ジータ達が黒騎士の脱走を手引きしたことにより剣を交えることとなった。
双方に仲間がいたため1対1ではなかったが結果はジータ側の勝利となり、彼女達は黒騎士と共に脱走を完了してしまう。

彼女は強くなるとリーシャも見込んだ。しかし、まさか自分が負けるとは思っていなかった。
納得がいかずに独断専行で彼女達を追いかけて再戦したが、結果は変わらず負けてしまった。

けれど、その戦いの中でリーシャははっきりと感じた。ジータの剣に自分の教えが色濃く残っていることに。たった10日間見てあげただけだが、それでもジータはリーシャの教えを忠実に守って修練を続けたのだ。
それを嬉しく思ったが同時に嫉妬心も抱いてしまう。自分も10年間鍛錬を続けて来たのにどうして負けてしまうのかと。

積み重なって来たコンプレックスは思い出の少女にさえも悪意を抱かせてしまい、結果暴走してしまう。
リーシャの留守中に第四騎空艇団の本拠地であるアマルティア島を占拠した、元秩序の騎空団船団長にしてエルステ帝国中将であるガンダルヴァに煽られ、半狂乱になって彼に斬りかかってしまった。
発揮した火事場のバカ力のようなもので彼を退けることには成功したものの、激しく見苦しいところを行動を共にしていたジータ達に見せてしまった。

複雑な感情がないまぜになり拠点を1人抜け出してしまうリーシャ。そんなリーシャをジータは追いかけて来てくれた。
嬉しいと思うよりも先に彼女に聞いてしまう。父のことを重荷に思わないかと。何も知らずに憧れていた頃と違い、旅に出た今なら少しは変わったのではないかと。
しかし、ジータは変わらず『誇りに思っている』と答えた。強がりでも何でもなく、本当に純粋にあの頃の憧れを抱き続けていた。

そんな彼女が眩しくてリーシャは彼女が羨ましいと、自分は父の名を借りない何かにも、父の名に恥じない強さも持てなかったと泣き言を漏らしてしまう。
彼女はそんなリーシャに『リーシャはリーシャでいい。自分がやりたいことをやればいい』と言ってくれた。あの頃と同じように、リーシャが自分自身さえも気づかなかったずっと言ってほしかった言葉を、また。

そう言って笑ってくれるジータはどこまでもあの頃のままで、リーシャは泣き出したい気持ちを堪え拠点に戻って島を取り戻すための作戦を考えるのだった。

結局全て計画通りとはいかなかったが、ガンダルヴァをジータと2人で打ち倒すことに成功し、囚われていたモニカも救い出して島を取り返すことができた。

モニカにもほめられたコンビネーションは、ジータの剣がリーシャの教えを忠実に守っていたからこそできたこと。互いに次に相手がどう動くのか言葉を発さずとも察することができたがゆえの連携だった。

その後、リーシャは独断専行の罰により船団長を辞任、ジータの騎空団へと派遣されることになった。
こうしてリーシャはジータとの約束通り、共に空を旅することになった。ジータは『セリア』の正体がリーシャであることには気が付いていなかったが。


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