文香「事実は小説よりも奇なり」
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9: ◆6QdCQg5S.DlH[saga]
2018/05/13(日) 10:17:47.54 ID:Gw9FEXII0
文香(私の知らないころの話から私の知っているころの話まで)

文香(叔父の歴史がこの本に詰まっていたのです)

文香(……それに気がついて……私は、気分の高揚が抑えられませんでした)

文香(なにせ、面白かったのです。人の歴史というものが)

文香(人の書く物語とはぜんぜん違ったものなのです、人の歩む物語は)

文香(そこに物語的な要素は一切ありませんでした)

文香(伏線かと思ったものは回収されず、思わぬところで足をすくわれ……)

文香(まったく別物の面白さがあったのです)

文香(さらには、文体は一人称視点で書かれているため、何を思って行動してきたかがしっかりと書かれています)

文香(そのため、さながらその人となって歴史を追体験しているように思えるのです……)

文香(それもまた面白さの一つでありました)

文香(……人の歴史の面白さに魅了された私は、たくさんの人の歴史を読みました)

文香(書店に訪れる方にわざと間違えてこの本を渡し……すぐに回収し)

文香(お客様のいないときに、その歴史を読む)

文香(本に載る歴史はひとつだけなので、内容をノートに書き写しながら……)

文香(それは、もはや新しい趣味となっていました)

文香(……今となっては普通の本よりも楽しい……とすら思ってしまいます)

文香(だからこそ……止められない)

文香(馬鹿のように思われても毎回間違えて本を渡し、触れさせ)

文香(なんとかして相手の名前を引き出すのです)

文香(……この本唯一の難点は、歴史の持ち主の名前がわからないことですから)

文香(文中に載っている場合もありますが……載っていない場合もあります)

文香(ですから、あえて自ら自己紹介をするのです)

文香(名乗られたら……名乗り返してくれる方が大半ですから)

文香(苦しい言い訳を入れつつもこうすることで、名前も確認できます)

文香「……」ペラッ

文香(2ページ目を開きます……そこには見たことの無い新しい歴史が載っていました)

文香(それでは、読んでいきましょう)

文香(藤居朋の歴史を)


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