遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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93: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/08/28(火) 23:02:05.01 ID:3l3UqrgJ0

「約束は、朝までだ。好きなだけ飲むといいよ」


「そのことなのよ、勇者ぁ……」


声に翳りがある。どうも妙だ。
なにか、嫌な予感がする。とてつもなく、嫌な予感が。


「あの、その……このワイン蔵に、もうワインはないの」


「はい?」


目が覚める。ワイン蔵のワインがなくなった?つまり、全て飲み干したということか?
いったい、どんな膀胱と肝臓を持っていればそんな事態が起きうるというのだ。いや、問題なのはそこではない。
頭の中のソロバンが、パチパチと音を立て始める。音は一向に止まらない、それどころか万来の拍手が如くパチパチパチパチと折り重なり鳴り響いていく。
その様は、まるでスタンディングオベーションだ。


「あの、その……ついキミと飲むのが楽しくて。はどめが効かなくなっちゃって……」

「わ、わたしも、それなりにお金は持ってるからあ!き今日は、わたしが払うからっ!」


……なんだ、いい娘じゃあないか。彼女が神妙な理由は、俺の懐を心配しているからなのだ。

俺は、彼女の唇に、人差し指をスッと伸ばす。
ふふっ、可愛らしい唇じゃないか。それ以上、俺に恥をかかせるのは止めておくれ。
君は何も心配する必要は無いんだ。だが、例えそう言っても君は俺の懐を心配せずにはいられないだろう。

だから送ろう。君自身が俺に教えてくれた。この言葉を。


「ここは、俺に任せて……先に行け……」


ソロバンの音は、まだ止まらない。


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