28: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/06/08(金) 22:53:57.04 ID:/Kiw1pMk0
その時を思い出しているのか、遊び人の表情は酷く強張ったものになっている。
この女は、内面が表情に全て出るタイプらしい。もしくは、酒のせいなのか。
「このビールは臭くなかったが、どういうわけだ?」
「貴方がそれを知る必要は無いわ……」
今度は、遠い目をして誤魔化そうとしている。
「なによ、その目は。いやらしい。あーいやらしい」
「ホップには、防腐剤の効果があるのよ。それに、ビールに独特な風味や香味を付け足してくれる」
「ビールには欠かせないものなのか」
「そうね、とある侯爵は領内で栽培されているホップを他国に持ち出したものを死刑にしたぐらいよ」
「あそこのビールは特に美味しくて有名だからね。それぐらい、ビール造りにおいてホップは重要ってことよ」
ウェイトレスが新しいジョッキを、机にドンっと置いていく。
今度は、その苦みを意識しゆっくりと味わってみる。やっぱり、まずい。
「そうね、こんな話もあるわよ」
聞きもしないのに、語り口を続ける。これも酔っ払いの特徴だ。酒は人を自己中心的にさせる悪魔の飲み物だ。
だが、どういうわけか俺はついつい彼女の話に耳を傾けてしまっていた。
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