遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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228:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/22(水) 21:56:02.26 ID:n2QIU6Th0


 ビールを飲めると聞くと、どうにも浮足立ってしまったのか俺たちは足早に応接室へと戻った。炎魔将軍に促され俺はソファに腰を下ろす、だがマスターはそれを固辞し、窓際で倉庫で働く男たちへ熱いまなざしを向けていた。


「勇者と命がけのやり取りをしたばかりだというのに、みなよく働くものですね」


「……幸い、身体だけは丈夫な連中ですので」


 俺は、フンと鼻を鳴らす。別に、俺が悪いことをしたとは思っていない。魔物と勇者が出会えば、剣を交えるのはごく自然なことなのだ。だが、ここでせっせと真面目に働いている連中を見た後だと、そんな連中をコテンパンに伸してしまったことに、僅かにではあるが罪悪感が浮かんできてしまう。


「しかし、勇者よ。腕が鈍ったのではないか?」


 俺は、顔をあげ正面の男に目を向けた。炎魔将軍の物言いに、罪悪感が薄れ、変わりに怒りが込みあがってくる。


「でなければ、甘くなったな」


「……もう一度、地面に這いつくばってみるか?」


 なるべく重く、そして冷たく声を出す。しかし、炎魔将軍に怯む様子はない。


「今日、この倉庫に死体が一つも転がっていないのはどういうわけだ。どうして、最後まで剣を抜かなかった? 」


「……それは」


 別に、不殺主義に目覚めたわけでも、魔物に情けをかけたつもりもなかった。そもそも、手を抜けるような余裕なんてものも今の俺にはない。だが、確かに今日の俺は剣を抜けなかった。いや、幾度となく抜こうとはしたのだ。しかし、その度に、まるで誰かに柄を抑えられているかのような不思議な感覚に陥り力が抜けてしまうのだ。

 そんな俺を、炎魔将軍は「甘くなった」と評した。その言葉は、かつて俺が遊び人に対して使ったものと同じものであった。


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