遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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210: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/14(火) 20:56:12.41 ID:X2S/KtAR0
 炎魔将軍の持つ刃から、ユラユラと揺らめく空気が昇っている。あの刃は、相当な熱を帯びているのだろう。その鋭さは、俺の骨すら断てるかもしれんと、思わず額から冷や汗が滴り落ちる。
 
 すると、まるで俺の恐怖を読み取ったかのように、炎魔将軍が先に動いた。地面を強く蹴り、一瞬で俺との間合いを縮めその炎の剣を横なぎに振るう。俺は、かろうじて後ろへ一歩退き剣をかわした。

 背後では、それを待っていたと言わんばかりにミノタウロスが斧を上段に構え待ち構えていた。無理な後退で体制を崩した状態では、斧を避けることは適わない。俺は、勢いそのままにミノタウロスに背中から突っ込む。懐に入られては、ミノタウロスも斧を振れまいという算段だ。

 案の定、ミノタウロスは斧を持て余してしまったようだ。せっかくの武器を放り投げ、その逞しい腕で俺につかみかかってきた。しかし、巨体ゆえかその動きは緩慢で俺を捕らえるには至らない。俺は、ミノタウロスの股の下を潜り抜け、その背後に回る。そして、まるで岩山を上るかのようにその背中を登り、遂にはうなじにまで到達し、その首へと手をかける。

 だが、その首はあまりに太く俺の腕では到底回りようがない。俺は、ミノタウロスの首に剣をあて、鞘の両端を持ち渾身の力で後ろへと引いた。呼吸ができなくなったミノタウロスは、俺を振り落とそうと体を揺らしにかかる。だが、こちらとて全力を込めているのだそう簡単には振り落とされない。


「ぐおおおおおおおおお」


 ミノタウロスの動きが、何かを決したかのようにピタリと止まる。その目は、まっすぐ炎魔将軍へと向いている。


「将軍! おでごと! 斬れっ!」


「応っ! 」


 ミノタウロスが、自身の背中を炎魔将軍へと向ける。その背に無防備に張り付いている俺は丸見えの格好だ。

 炎魔将軍は、一瞬の躊躇もなく右斜め上段から剣を打ち下ろしてきた。

 自身を犠牲にしろというミノタウロスと、それをいともたやすく受け入れる炎魔将軍。くそったれ、久しく忘れていた。こいつら魔族は戦いとあれば、死よりも敵を倒せぬことを恐れる連中だ。

 その判断の遅れが、俺がミノタウロスの背中から脱出するのをほんの僅かコンマ数秒だけ遅らせた。炎の刃は、ミノタウロスの背中と俺の脇腹を切り裂いた。

 俺は、片膝をつき炎魔将軍をにらみつける。傷はかなり深い、だがその燃える刃のおかげで肉が焼かれ傷は塞がっている。炎の刃で無ければ、はらわたが零れ落ちていただろうに、まったく炎さまさまだ。……いや、そもそも炎の刃だからこそ俺の肌を切り裂けたのか。久方ぶりの懐かしい痛みと己の阿呆さに、ふと笑みがこぼれる。


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