186: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/03(金) 16:35:04.82 ID:KfriHW7I0
――――――
朝日が、カーテンの隙間から部屋に差し込んでくる。
大きなあくびを一つ上げ、ググっと伸びをする。
アルコールの強烈な香りが鼻をついてくるせいで、とても清々しい朝だとは言えなかった。
床には割れたワインの瓶が転がっている。昨晩、彼女と飲みなおそうと教会から貰ってきたものだ。
宿屋の主人には悪いが、あの自家製酒はもう口にしたくなかった。
「まだ、結構残っていたはずだ。勿体ないことをしたな」
シャツを脱ぐと、襟から胸元にかけて赤いシミがべっとりついていた。
どうやら、頭からワインを被ってしまったらしい。いったいどんな寝ぼけ方をしたのやら。
「おい、遊び人。朝だぞ」
この部屋にはベッドが一つしかない。
俺は、先ほどまで自分が潜っていたベッドに向けて声をかける。
「おーい、キミに限って二日酔いなんてことはないだろう?」
ブランケットの中を覗き込む。
だが、そこには誰もいなかった。
「またかよ」
思わず恨み節がでてしまった。
その日、遊び人は俺の前から姿を消した。
俺は当然のように再び、彼女を探す。
そうして、彼女が消えてから半年が過ぎた。
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