162:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/04/07(日) 14:16:27.12 ID:NdD66LHM0
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「おや、兄ちゃん、どっから現れた!?」
大柄で禿頭の店主が、突然転移してきた俺を驚きの表情で出迎えてくれた。
「悪いが、部屋はやっぱり一つしか取れなかったよ」
最悪だ。
部屋が一つしか取れていないことを、俺はすっかり忘れていた。
この険悪な雰囲気のまま、彼女と一晩過ごすのはどんな強敵と戦うよりも困難を極めることだろう。
「あれ、あの可愛い姉ちゃんは一緒じゃないのかい」
店主の言葉に、俺は慌てて周囲を見回すがどこにも彼女の姿はなかった。
なに心配することはない、彼女は腕もたつし夜にふらっといなくなることはよくあることだ。
きっと、近くのスピークイージーになりへ行ったのだろう。
俺は、気まずい夜を過ごさないで済むと少しだけほっと胸をなでおろし床へ着く。
明日、どんな顔して彼女に顔をあわそうかと気に病む間もなく俺は意識を失うように夢の中へと落ちていった。
残念なことに、もしくは幸いなことにか。
翌朝、俺は気に病む必要などなかったことを思い知る。なぜなら、彼女は朝になっても戻ってこなかったからだ。
そしてその翌日も、そのまた翌日も。
彼女は帰ってこなかった。
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