151: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/04/07(日) 14:10:52.62 ID:NdD66LHM0
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人間、酔っぱらうと本性がでるものである。
理性という名の鎧が、普段は身を潜め息を殺してきた溢れんばかりの衝動によって内からはち切れるのだ。
抑えるものが何もなければ、例え進む先が地獄だとしても迷わずに突き進んでこその酔っ払いである。
言いたいことをいい、やりたいことをやる。何を恐れるや。その姿、まさに勇者と呼ばれるにふさわしいのではないか。
では、女神からお墨付きを受けている唯一本物の勇者である俺が酔っぱらったらどうなるのであろうか。
残念なことに、みなの期待には応えられそうにはない。俺は勇者ととしての使命感からか、仮に酒に酔ったとしても何ら素面の時と変わらないのだからから。
まっこと残念なことである。まっこと。
だがしかし、それでも多少なりともほんの僅かであろうが口の滑りが良くなることはあるやもしれない。
さて、酔っ払いが二人。共に思うところあって、懐にのっぴきならぬ問題を抱えて、さらには口に酒を含んだらどうなるか。
行きつく先なんてのは、火を見るよりも明らかではなかろうか。
それは、ついつい初めての「カクテル」に興味心を引かれ昼間の険悪な雰囲気を忘れていた俺。
そして、ついついお気に入りのバーに来たことで大好きなカクテルで喉を潤すことに没頭してしまっていた彼女。
数多の酔いどれをして、「うわばみ」と称されるカップルと言えど酔いには逆らえないのが世の常。
夜も更け、俺たちはいつになく酒に酔っていた。
ワイン蔵を文字通り空けてしまったこともある俺たちをして、僅かなカクテルに酔わされるとは不思議なものである。
だがこのカクテルバーという独特の雰囲気を持つ場には、それを成す何物かが潜んでいるのだ。
つまるところ、俺と遊び人の間に何が起こったのかというと。良い雰囲気に流されて、男女がともにくんずほぐれつ汗をかく……なんてことが起こるはずもなく。
ごくごく酒場にあり触れた光景。腹を割ってのタイマンである。要は喧嘩である。
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