遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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102: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/10/19(金) 20:51:58.04 ID:U0E6GTtU0

母さん、俺、今日こそ男になります。


俺と遊び人との旅がはじまり、どれだけの年月が流れただろうか。
初めての出会いは既に、悠久のかなたのように思えるが、今日という記念すべき一日までの出来事は遍く脳内に書き記してある。

いや、懺悔しよう。全て覚えているとは言ったが、本当に全てを覚えているわけではない。
だが安心してほしい。時に男は、忘れる生き物だと聞くし。人は、失うことで前に進めることもある。俺の記憶の喪失も、そういった何かしらの尤もらしい理由に則ったものだ。
もっと具体的に言えば、さすがの勇者といえど酩酊した際の記憶は明確ではないということだ。勇者から記憶を奪うとは、酒の力は実に恐ろしいものだ。

ふと目が覚めたら、教会の地下で身ぐるみはがされていたこともあった。
街のゴミ捨て場で、汚い麻袋を枕としていたこともあった。身に覚えのない、痛みを感じることもあった。
もう一度、声を上げよう。だが、安心してほしい。全ての恥は、その記憶とともに嘗てありし夜に置いてきた。俺に恥じることは何もない。

かつての俺は、溢れんばかりの道徳意識を王より譲り受けた宝剣とともに腰に携えていた。
だが、いまやこの体たらく。夜になれば彼女とともに酒を飲み、道端に戻した胃袋の中身よろしく、記憶と強き道徳意識を土に還してしまう。
勇者として、俺は多くの物を失ってしまった。

しかし、人は時として失うことで前に進めることもあるって、さっきも言っただろう?
そういうことだから、安心してくれ。


ゴーレムとの一戦以来、俺と遊び人は魔王に関する大した情報を得ることが出来なかった。
別に、俺たちに落ち度があったわけではない。俺と遊び人によって、立て続けに拠点を強襲されている魔王軍としても情報の秘匿に力を入れているのだろう。

だがしかし、いくら魔王軍が影に潜み隠れようとも。こちらには魔王軍にからしてみればチート以外の何物でもない「千鳥足テレポート」がある。
俺と遊び人は、魔王捜索に行き詰まると酒を飲み、そして千鳥足テレポートで飛んだ。もちろん飛んだ先々では、魔物たちと剣を交え魔王の居場所を問い詰めるのだ。
情報が得られなければ、また日を改めて酒を飲み千鳥足テレポートだ。

そんなこんなを、俺たちは半年ほど続けてきたが未だ魔王の居場所に関する情報は一切得られていない。
だが、情報を得られなくとも。テレポートで飛び続ければ、いつか必ず魔王のもとへとたどり着ける。俺は、そう信じ今日もエールを流し込む。


「勇者さん勇者さん、そろそろご都合はいかがでしょうか」


「おやおや、遊び人さん。俺が、もうそんなに酔っぱらっているよおに見えるのですかな」


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