藤丸立香「あなたたち、どうせ死んでたんだから」
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3:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 23:35:12.31 ID:099CA5/+O
「溶かして。魔力がいるの。貴女の宝具なら、この大地の命すべて、溶かして魔力に変えられるでしょう」

 その淡々とした言葉に、ゴルゴーンは笑みを浮かべる前に冷や汗をかきそうになる。
 これは、一足とびに踏み抜けてしまったものだ。
 復讐ではない。いや、あるいは復讐の側面もあるのかもしれないが、ともかく一番大きな感情はそれではない。
 というか、感情らしきものが、あまりに稀薄だった。
 それは必要なものを集める「作業」。
 そのために、彼女は手段を選ぶという行為をしなくなった。

「……ああ、いいだろう。お前がそう言うのなら」

 今の彼女に不用意なことは言えない。ゴルゴーンはそう判断した。
 七つの特異点と多くの異常地帯を駆け抜けた彼女は、けれどその善性によって己を律していた。
 力に溺れず、他者に気遣い、ただ生きるために全力で走り続けてきた。

 それが、その善性を捨ててしまったら。
 最早それは災害ですらない。そういう認識すら、彼女には追い付かない。

「礼呪をもって命ずる。宝具でこの大地を溶かせ、ゴルゴーン」

 彼女の言葉と魔力にしたがい、ゴルゴーンの魔力が高まっていく。

「まずい、アイツまさかヤガ達を──!」

 男がなにか言おうとしたが、もう彼女は止まらない。

「重ねて礼呪をもって命ずる。宝具ですべての命を魔力に変えて」
「アナスタシア、あいつを止め」
「重ねて礼呪をもって命ずる。宝具を使い続けろ、ゴルゴーン!」

 三画分の魔力に後押しされ、ゴルゴーンの宝具がロシア全土へと広がっていく。
 逃げ場などない。隠れる場所もない。
 すべての命はつゆと消え、魔力へと変わっていく。
 だが別に構わないだろう。


 ──あなたたち、どうせ死んでたんだから。


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