藤丸立香「あなたたち、どうせ死んでたんだから」
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2:名無しNIPPER
2018/05/05(土) 23:33:32.46 ID:099CA5/+O
「……ゴル、ゴーン」
彼女のそばにあった機械が駆動を始める。
立香のか細い魔翌力回路が悲鳴をあげ、命をすり減らして魔翌力を生み出す。
記録された霊基パターンが読み込まれ、求めに応じてその存在を引きずり出していく。
それは魔獣の母であった。
それは討たれるべき悪であった。
それはヒトに復讐を誓った女神であった。
それは、けれど、今この瞬間確かに立香にとっての福音たり得る存在だった。
「くく、ふはははは……! 久しいなマスター! ああ、すべてわかっている。その目は同じだ、憎いのだろう、許せないのだろう? だから、私を呼んだのだろう!」
ゴルゴーンはその巨体を揺らして笑う。
自らを再び呼び出したこの愚か者は、けれど今初めて、自分と同じ存在になり果てたのだと。
当然だ。全く持って当然にすぎる。
この女は善である。ごく当たり前の善性を常にもち続けた奇特すぎる存在である。
その善の象徴を、心を通わせた無二の友を、目の前でこうも易々と殺されて、正気でいられるはずがない。
これはあの終極特異点のときとは違う。少女の死はなにも残さず、何を託すこともなく、ただ断絶した。
それは、それは、あまりに惨く、残酷で。
「それでマスター、立香よ。お前を苦しめるあの女を丸のみにするか? それとも側の男を溶かし殺してやろうか? 今のお前にならどんな言葉でも従ってやろう」
奇妙な共感と、同情と、安堵を含んだ言葉だった。
悲しいのだろう。苦しいのだろう。それを理解しているからこそ、ゴルゴーンはこのマスターに対してささやかな親近感を抱いていた。
けれど。彼女はその程度では止まらない。
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