78:名無しNIPPER[saga]
2018/05/09(水) 00:08:23.94 ID:N1ymMDaN0
「以上がかつて起きた事件の全容です。」
右京から事件の全容を聞かされて冠城と青木は絶句した。
事件の顛末があまりにも報われなかったからだ。
この事件の発端となった母親のエゴ。そのエゴに振り回された子供たち。
それは彼らの想像を絶するものだった。
「右京さん聞きたいことがあります。
その事件ですがもしも兄弟が死んだらどうなっていたんですか…?」
一見不謹慎な冠城の質問だがこれは実際起こりえたかもしれない問題だ。
そんな問いに右京は紅茶を一口飲み込んだ後にこう答えた。
「これは事件後に明くんが打ち明けてくれたことです。
福島一家の住んでいたアパートには不似合いなスーツケースがありました。
もしも兄弟の誰かが死んだら
そのスーツケースに弟妹の死体を入れて遠くに埋葬するつもりだったと語っていました。」
同じだ…その話を聞いて冠城は当時の事件が高田兄弟の事件と似ていると思った。
高田創は幼い妹を死なせてしまい埋葬するために近所の河原に埋めた。
どちらも本来なら死体遺棄だが子供たちには戸籍がない。
だからもしも兄弟の誰かが死んだとしても死亡届を出すことも出来ない。
いや、母親がいなければ何をやればいいのかすらわからないだろう。
そんな幼い兄が死んだ弟妹に何をしてやれるのか?
それは見晴らしのいい場所に埋葬してやれることくらいしかない。
スーツケースを棺桶代わりにして埋葬する。その行いを咎められるだろうか?
いや、無理だ。周りの大人は誰も助けようとしなかった。
それなのに誰が子供たちを責められるだろうか。
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