89: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/26(土) 23:50:18.77 ID:k41t6Mgh0
建物の外へ。かすかに足元がふらつき、頭を振って眠気を払う。タクシーをつかまえ、帰宅。
玄関先で眠りそうになるのをこらえ、洗面所へ。手を洗い、うがいをする。
『私が、困っちゃうよ』
寝室へ移動。室温、問題なし。湿度、問題なし。水分――やや不足していると感じる。
ミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。封を切り、半分ほどを一気に飲み下す。
ベッドにもぐりこみ、目を閉じる。
『助けてあげてよ』
まどろみの中、思い返す。
あたしを頼りにするなんて、周子ちゃんもどうかしてる。
白菊ほたる、不幸の申し子。
あまり心配はしていない。あんな捨てられた子犬みたいな目をした子を、夕美ちゃんが放っておくわけがない。
ふと彼女の担当プロデューサーに思案を向ける。
深い会話を交わした覚えはない。ほたるちゃんの代役内定後、丁寧なあいさつをしにきた。
20代後半、独身、いつも戦闘服のように隙なくスーツを着込んでいる。兵士、あるいはサイボーグを連想。ビジネスライク。
以前担当していたアイドルの引退後、ほたるちゃんをスカウトするまでは事務仕事に専念していたという。
事務所内ですれ違った際、ときおり、ごく少量のメンズパルファンを漂わせていることがある。
印象、自ら購入してまで香りを身につけるタイプではない。あれば使うかもしれない、もらいもの?
女から男へ香水のプレゼント。マーキングの意味。
噂、以前の担当アイドルと男性芸能人のゴシップ沙汰。346の権力で握りつぶした。
その後、彼女はテレビの生放送中に引退を表明。くだんの男性芸能人との進展はなし。以降の行方は知れず。
アイドルから担当プロデューサーへの恋慕、失恋、あてつけ?
思考を中断――空想の域を出ない。
だけど彼からは、隠し事の匂いがする。
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